「在庫や生産の記録を紙とExcelで回していて、集計のたびに時間がかかる」「DXを進めたいが、何から始めればいいのか、失敗しないか不安」と悩んでいる富山の中小製造業の経営者や現場責任者の方は多いのではないでしょうか。
製造業のDXで失敗しないためには、困っている業務を1つに絞り、紙やExcelでやり取りしている情報を整理してから、小さくシステムに置き換えることが大切です。ツールを先に選ぶと現場の反発を招き、最初から全社で一度に変えようとすると初期投資が膨らみがちです。
この記事では、製造業のDXの段階、紙・Excel管理が限界に来ているサイン、つまずく主な原因、失敗しないための手順を解説します。富山県で使える相談窓口と補助金、シーズプランニングが手がけた製造業の事例も紹介します。
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製造業のDXとは?
製造業のDXとは、製造装置や製造工程の監視・制御などのデジタル化を軸に、ITと連携させて、製品やサービス、ビジネスモデルを変えていくことです。
経済産業省の「DXレポート2」では、DXを次の段階に分けています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 紙などの記録をデータにする段階(デジタイゼーション) | アナログ・物理データのデジタルデータ化(紙文書の電子化など) |
| 個別の業務をシステムにする段階(デジタライゼーション) | 個別の業務・プロセスのデジタル化 |
| 会社全体の仕組みを変える段階(デジタルトランスフォーメーション) | 全社的な業務・プロセスのデジタル化と、顧客起点の価値を生むための事業やビジネスモデルの変革 |
手書きの記録をデータにするのは、最初のデジタイゼーションにあたります。在庫管理や製造指示など、個別の業務の流れをシステムにすると、次のデジタライゼーションの段階です。
中小機構が2026年2月に公表した中小企業のDX推進に関する調査では、製造業500社のうち、DXに「既に取組んでいる」は23.0%、「取組みを検討している」は25.0%でした。
一方で、必要だと感じながら取り組めていない製造業も30.0%あります。
中小製造業の紙・Excel管理が限界に来ているサイン
次のような状態が出てきたら、紙とExcelでの管理を見直すタイミングです。
- どのファイルが最新版かわからない
- 作った人しかマクロや数式を直せない
- 現場の手書きの記録を、事務所でExcelに打ち直している
- 在庫や進捗が、その場で更新されない
- Excelの動作が遅く、エラーが出る
とくに気をつけたいのが、Excelのマクロで作った管理表です。作った社員がいなくなると、業務が変わっても直せる人がいません。
弊社シーズプランニングがシステム化を手がけた製造業の会社でも、かんばんを発行する仕組みが古いバージョンのExcelでしか動かず、動作が遅くエラーも頻発していました。全社でMicrosoft 365への移行が進むなか、このまま使い続けられるかが課題になっていました。
マクロで作ったExcelが属人化する原因や、システム化を考える目安をまとめた記事もありますので参考にしてください。

中小製造業のDXがつまずく主な原因
中小製造業のDXがつまずく主な原因は、次のとおりです。
- 目的があいまいなまま始める
- ツールを先に選ぶ
- 最初から全社で一度に変えようとする
- 現場を巻き込まず開発会社に任せきりにする
目的があいまいなまま始める
「とりあえずデジタル化しよう」という状態で始めると、導入後に効果を測れず、仕組みが形だけになってしまいます。
中小企業全体(1,000社)を対象にした中小機構の調査では、DXに取り組むうえでの課題として、21.4%の企業が「具体的な効果や成果が見えない」を挙げています。
ツールを先に選ぶ
現場の業務の流れや熟練者のやり方を見ずにシステムを決めると、かえって作業が複雑になり、現場の反発を招きます。
最初から全社で一度に変えようとする
中小企業は人も予算も限られています。大きな計画を一度に進めると、初期投資が膨らみ、途中で続けられなくなることがあります。
同じ中小機構の調査(中小企業全体)では、DXの課題として「ITに関わる人材が足りない」が28.3%、「予算の確保が難しい」が26.0%で上位でした。
現場を巻き込まず開発会社に任せきりにする
経営層と現場の意識に差があるまま進めたり、開発会社に任せきりにしたりするのも、つまずく原因です。使いにくいシステムを避けるには、現場の作業者やベテランの話を最初の段階から聞いておく必要があります。
紙・Excel管理から抜け出す製造業のDXの進め方
IPA(情報処理推進機構)が中小製造業向けに公開しているDX推進のガイドは、DXを進める流れを、DXを理解する、目指す姿を描く、組織の現状を把握する、課題を明確にする、計画を立てて実行する、という順番で示しています。紙とExcelの管理からシステムに移るときも、この進め方をベースにするのがよいでしょう。
- DXで目指す姿を経営者が決める
- 自社の現状を把握する
- 最初に取り組む業務と効果の測り方を決める
- 業務に合う作り方を選んで導入の計画を立てる
- 1つの現場で試して効果を確かめてから広げる
ステップ1:DXで目指す姿を経営者が決める
最初に、DXで会社をどう変えたいのかを、経営者が中心になって決めます。
日々のカイゼンは、現場から作業効率や品質を上げていく取り組みです。これに対してDXは、経営のトップが主導し、会社全体の最適化や長期的な事業戦略まで含めて進めます。DXの推進には、経営トップのリーダーシップが欠かせません。
IPAのガイドでは、製造業のDXで目指す姿として、次のようなものを挙げています。
| 目指す姿 | 内容 |
|---|---|
| スマートファクトリー | 工場の生産性や稼働率を上げる |
| スマートプロダクト | 製品のデータを分析し、顧客価値を高める |
| スマートサービス | 製造プロセスや製品をサービスとして提供する |
どれか1つに絞る必要はなく、すべてを目指す必要もありません。会社の実情に合わせて選べば十分です。
IPAの事例集には、中小製造業の取り組みとして「設備の稼働状況、生産実績の把握」や「PCやタブレットによるいつ誰でも可能な情報共有」も載っています。こうした取り組みも、目指す姿を考えるときの参考になるでしょう。
DXに対する経営者のビジョンを従業員に伝え、社内に浸透させる取り組みも重要です。
ステップ2:自社の現状を把握する
次に、自社のいまの状態を確かめます。確かめ方には、自己診断と業務の書き出しがあります。
IPAのガイドにある「製造分野DX度チェック」は、項目ごとに、自社がレベル0〜3のどの段階にあるかを確認する自己診断です。結果をもとに、どの項目のレベルを上げるかを決めるのが次の段階です。ガイドには、レベルを上げるための取り組みの例も載っています。
あわせて、紙やExcelで回している業務を書き出します。受注から出荷までの流れに沿って、各工程で何を受け取り、何を作り、誰に渡しているかを整理しましょう。
- どの工程で、どの紙に手書きしているか
- その内容を、どのExcelに転記しているか
- 集計や報告に時間がかかっている作業はどれか
- 作った人しか直せないExcelやマクロはどれか
印刷業の事例では、製造に関わる帳票を手書きし、回収した情報を管理用にExcelに起こしてまとめていました。こうした流れを、工程ごとに書き出します。
現状把握する際は事務だけでなく、現場の担当者やベテランにも、直接話を聞きながら進めるのがポイントです。
ステップ3:最初にDX化する業務を決める
書き出した業務の中から、最初にシステムにする業務を1つ選びます。いきなり全部を変えようとすると、人も予算も足りず、初期投資が膨らみがちです。
選ぶときは、「棚卸の集計に時間がかかる」「部品の発注漏れが起きる」のように、困りごとがはっきりしている業務を選びます。
中小機構の調査では、DXに取り組む・検討している中小企業の取り組み内容で最も多かったのが「文書の電子化・ペーパレス化」で、55.8%でした。製造業DXにおけるペーパーレス化については、次の記事で紹介しています。

DXに取り組む業務を選んだら、導入後の成功指標や目的も決めておきます。目的があいまいなまま始めると、導入後に効果を測れず、仕組みが形だけになってしまうためです。
たとえば「棚卸の報告までにかかる時間」「発注漏れの件数」「Excelへの転記にかかる時間」のように、導入の前と後で比べられるものにします。
ステップ4:システム化の方法と導入計画を立てる
システムの作り方を選ぶときの目安は、次のとおりです。
| 作り方 | 合いやすいケース | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 市販のパッケージソフト・クラウドサービス | 業務の流れが一般的で、そのまま使える | 自社のやり方に合わない部分を、業務側で変えられるか |
| ファイルメーカーなどの開発ツールによる開発 | 在庫や受注など、自社独自の管理を小さく始めて育てたい | 開発後の改修や保守を誰に頼むか |
| プログラミングによるオーダーメイド開発 | 複数の業務をまとめて、細かく作り込みたい | 要件を決める手間と、開発にかかる期間 |
たとえば「ファイルメーカー(Claris FileMaker)」は、業務アプリの開発ツールです。在庫や顧客、案件の管理など、自社の業務に合わせたアプリを作れます。
作り方が決まったら、次は導入の計画です。計画では、次のことを決めておきます。
- システムで管理する項目(部品の台帳、入出庫の記録、棚卸の数量など)
- 誰が、どこで、どの端末で入力するか
- 使う場所の通信環境
- 補助金や外部の支援を使うか
- 導入後の改修や保守を誰に頼むか
工場の中で入力するなら、Wi-Fiなどの通信環境も確認します。たとえば、部品の入出庫と棚卸の事例では、工場内にWi-Fiがなかったため、モバイルルーターでシステムを使えるようにしました。
IPAの事例集でも、補助金の活用や、ITベンダー・コンサルを活用したDX推進が、中小製造業の取り組みとして挙がっています。
ステップ5:1つの現場で試して効果を確かめてから広げる
作ったシステムは、まず1つのラインや部署で試します。使ってみて出た不満を直し、ステップ3で決めた基準で効果を確かめてから、ほかの業務や部署に広げてください。
経済産業省のDXレポート2も、重点となる部門を見極めて小さく始め、段階的に全社へ広げる進め方を示しています。
システムを入れただけで、DXが達成されるわけではありません。1つの業務のシステムは、ほかのシステムとつなぐことも可能です。印刷業の事例の製造指示のシステムには、工程管理システムと案件の情報を連携する機能があります。
導入後も、業務は変わっていきます。弊社が実際に支援したかんばん発行の事例では、業務の変化に合わせて直したくても、Excelの仕組みをわかる人がいないことが課題でした。改修や保守を頼める先まで含めて、使い続けられる体制を作っておくことが大切です。
【富山県の場合】中小製造業が使えるDXの相談窓口と補助金
社内だけで進め方を決められないときは、富山県内の公的な窓口に相談できます。
富山県内の公的な相談窓口
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 富山県新世紀産業機構(TONIO)のデジタル化相談窓口 | DXやデジタル技術の導入について、DX総合アドバイザーに無料で相談できる。自社での対面やオンラインでも相談可能 |
| とやまDXコンソーシアム | 産学官金が連携して県内企業のDXを支援する団体。入会・登録なしで、窓口への相談やDXパートナーの紹介を受けられる |
| 富山県よろず支援拠点 | 国が設置した経営相談所。事前予約制で、何度でも無料で相談できる |
窓口ごとの違いや、開発会社への相談の仕方は、次の記事にまとめています。

製造業のDXで使える補助金
富山県の「中小企業トランスフォーメーション補助金」は、県内に本社がある中小企業のDXやAI導入などの取り組みを支援する補助金です。第3次では、GX枠を除き、とやまDXコンソーシアムに登録された「とやまDXパートナー」の支援を受けて申請する必要がありました。
第3次の募集は締め切られています。次回の募集の有無は、TONIOの補助金・助成金のページで確認してください。
国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)は、ITツールの導入費用の一部を補助する制度です。IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたITツールが対象になります。通常枠の補助率は、原則1/2以内です。
シーズプランニングが手がけた製造業の紙・Excel脱却の事例
シーズプランニングが、紙やExcelで管理していた業務をシステムに置き換えた事例を紹介します。
- Excelで管理していた部品の入出庫と棚卸(製造業)
- 古いExcelで動かしていたかんばんの発行(製造業)
- 手書きだった製造指示書と帳票(印刷業)
Excelで管理していた部品の入出庫と棚卸(製造業)
数万点の部品の入出庫をExcelで管理していた製造業の事例です。Excelのレスポンスが悪く、それまでの仕組みも改修できない状態でした。
棚卸は、手書きの記録をExcelに転記して集計していたため、報告までに膨大な時間がかかっていました。
そこで、入出庫と棚卸を管理するシステムを、ファイルメーカーのクラウドサービス「FileMaker Cloud」で作りました。棚卸はiPadでも入力できるため、手書きが不要になり、すぐに集計できます。
発注が必要になると、画面にメッセージが出て、管理者にもメールで通知が届きます。工場内にWi-Fiがなかったため、モバイルルーターでFileMaker Cloudを使えるようにしました。
実績紹介はこちら:部品入出庫&棚卸システム
古いExcelで動かしていたかんばんの発行(製造業)
部品の社内管理と、配送先の関連会社のシステムとの連携に使う、QRコード付きのかんばん(帳票)を発行する仕組みの事例です。
当時在籍していた社員がExcel上のプログラム(VB)で作った仕組みで、動かすために古いバージョンのExcelを残す必要がありました。業務の変化に合わせて直したくても、わかる人がいない状態でした。
ファイルメーカーに切り替えたことで、Microsoft 365への移行後も運用を続けられるようになりました。動作も安定し、滞りなくかんばんを発行できるようになりました。
実績紹介はこちら:かんばん印刷システム
手書きだった製造指示書と帳票(印刷業)
製造に関わる帳票がすべて手書きで、見返しや検索ができなかった印刷業の事例です。回収した手書きの情報は、管理用にExcelに起こしてまとめていました。
新しいシステムでは、受注情報を登録するだけで、製造指示書や各工程の検査チェック表、梱包に貼るラベルなど、業務に必要な帳票を印刷できます。業務の変化に合わせて、帳票を変えるのも簡単になりました。
実績紹介はこちら:製造指示情報管理システム
Excel管理をシステムに切り替えると現場の仕事がどう変わるかは、こちらで紹介しています。

シーズプランニングは、創業時からファイルメーカーでの開発を手がけ、Claris社のパートナー企業として業務システムを開発しています。市販のソフトに業務を合わせるのではなく、現場の業務に合わせたシステムを小さく導入し、事業に合わせて育てていく進め方が私たちの持ち味です。
紙やExcelの管理から抜け出したいものの、どの業務から手を付けるか決められない段階でも、ぜひシーズプランニングにご相談ください。訪問またはオンラインでお話を伺い、どのようなシステムが合うかをご提案します。
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中小製造業のDXの進め方まとめ
中小製造業が紙・Excel管理から抜け出すには、まず経営者が中心になって、DXで目指す姿を決めます。そのうえで、業務の流れと紙・Excelの使われ方を書き出し、最初に取り組む業務を1つ選びます。
作り方を選ぶポイントは、書き出した業務をそのまま扱えるかどうかです。1つの現場で試し、効果を確かめてから広げると、課題を早めに見つけて直しながら進められます。
進め方に迷ったら、県内の公的な相談窓口や、製造業のシステム開発の実績がある開発会社に相談してみてください。
有限会社シーズプランニングでは、WEBシステム開発やFileMakerを活用した業務システム開発を長年にわたり手がけています。
私たちが大切にしているのは、「超現場主義」の姿勢です。実際に紙やExcelを使っている方の話を直接お聞きし、どこで転記や集計に手間がかかっているのかを一緒に整理したうえで、業務に合わせたシステムをご提案します。
また、圧倒的なフットワークの軽さと、柔軟な開発対応も私たちの強みです。「ちょっとした相談をすぐにしたい」「困ったときにすぐ駆けつけてほしい」といったご要望にも、地元・富山に根ざした企業だからこそのスピード感でお応えします。
「Excelの管理表を直せる人がいない」「どの業務からシステムにすればいいかわからない」といった段階でのお問い合わせも歓迎しています。どうぞお気軽にご相談ください。
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